“アヴァル”橋には歩道がない。付近も高速道路へのバイパスや工事現場があるのみで、写真を撮ろうと歩いているうちに巨大な工事現場の迷路に入り込み、い つの間にかパリ郊外に出てしまった。

この一帯は裕福な郊外である。このあたりのセーヌ川には小島がいくつか浮かんでいて、最初の細長いサン・ジェルマン島 には大きな橋が二つ(イッシー橋、ビーヤンクール橋)架かっているが、左岸だけにあるレトロな吊り橋を渡ると、こんもり茂った小さい森の中に素敵なレスト ランがあったりする。無理もない。“アヴァル”橋の16区側にはテレビ局TF1(テーエフ・アン)があり、15区側にも通信会社Bouygues Telecom(ブイグ・テレコム)など最新ハイテク技術の会社が建設中で、この一帯は近く、先進ビジネス街となる。

ずいぶん長いと遠目に感じた通り、実用オンリーで名もないこの橋は、312.5mと、パリで一番長い橋だった。広さ34.6m、コンクリートでできた 桁橋で、完成は1968年。フランス語でスワサント・ユィットsoixante-huite(68の意)というが、学生運動が盛り上がった年、団塊世代の 青春が燃えた年なのだ。

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