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パリのノートルダム大聖堂は、シテ島に建つフランスカトリック教会の総本山だ。世界遺産として広く知られているため、信者でなくとも世界中から 人が訪れ、建物の中も外もつねにごった返している。荘厳、かつ勇壮、などと形容されるゴシック建築の最高傑作のすばらしさは、レースのように細やかなレ リーフの刻まれた優雅で格調高い正面だけではわからない。

この建物の迫力は、後方の予想もつかないほど奇怪な姿にもあり、その変則的なフォルムには誰しも度 肝を抜かれる。建物をささえるために構造上そうなったのかも知れないが、この禍々しい(?)後ろ姿は、華やかな前姿とともに、近寄りがたい聖域をかたちづ くる一種のバリアーを放っているように思う。

この後ろ姿をはじめて見たのはかなり昔のことだ。わたしは、その少し前に封切られたアニメ映画「風の谷のナウシカ」を思い出し、巨大な昆虫の王 蟲(オーム)がそこにいるのかと思った。漫画作品の中の、腐海に棲むテレパシー能力を持つ神聖な生き物と、フランスの信仰の中心でありパリ発祥の地に建つ 「ノートル(私たちの)ダーム(貴婦人)」すなわち聖母マリア様。カトリック信者にはとんでもない不謹慎な連想ながら、以来、私の中ではこの二つのイメー ジが混在し、それらに備わっているかもしれない超自然的な影響力(人が生きる力をそこから汲み取れるような)を思い比べてみたりしている。旅人ではなく住 民として何度見ても、建物の内部奥にあるすばらしいステンドグラスのあの丸窓が王蟲の目であるかのような錯覚に陥っては、やはり異様な建物だと思わずには いられない。

セーヌ川クルーズはこの後ろ姿を回ったところが折り返し地点となる。(その2に続く)

クルーズ ノートル これは今の(←2014年)