サン・ジャック塔はパリ市が買い取ったものの、何十年もの間、汚れ放題に放置されたままだったが、2001年頃から修復する話になり、2008年、ようやくお化粧 直しが終わり、パリに20年以上住む人でも見ることのなかったサン・ジャック塔の白くまぶしい姿が公開された。その繊細なレースのような美しさ を見ると、ここが「不吉な場所」になっていたのが不思議でたまらない。

純白の塔を背にして巡礼が歩いた始まりの道をいこう。

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ブキニストのいるジュスヴィル岸からノートルダム橋を渡ってシテ島に向かうと左手に大きく見える建物が、オテル・ディユー(Hôtel Dieu:神の家の意)病院だ。

中世から存在する病院はじつに質素で、これと言って取り柄も色気もない箱形、しかも橋 から見えるのは黒ずんだレンガの後ろ姿のみ。都市計画のお偉いさんがこれを取り壊して観光客向けのものにしたい気持ちはよくわかる。が、病院関係者は断固 として反対、いつもお流れになるらしい。有名デパートサマリテーヌだっていまだにずっと閉鎖中だし、お金儲けだけを優 先しないところがこの国のいいところかもしれない。橋を渡りきると右手に花市が広がり、その先にはパリ警察庁が居を構えている。いかめしいところに花があ ふれていて救われる。

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左手の重苦しいHôtel Dieu病院の壁がようやく途切れると、ぱっとノートルダム大聖堂広場が開け、その奥にカテドラル正面が見える。このまま続けて行くとプティ・ポン、次の橋となる。それを渡ると、にぎやかなカルチェ・ラタンだ。