元フランス植民地セネガルの故初代大統領レ オポルド・セダール・サンゴール(1906〜1995)は、フランス語詩人としても著名であり、アフリカ出身として初めてのアカデミー・フランセーズ会員(1983年)だ。自国セネガルの国歌を作詞した人でもある。差別と偏見にまみれたアフリカ人のアイディンティティを回復する「ネグリチュード運動」を提唱。1960年の独立後は大統領として、国内ではアフリカ社会主義 政策を、対外的には親欧米政策、親仏政策を採り、フランコフォニー(フランス語圏)国際機関(組織)の設立にも尽力した。

写真で見ると懐の深そうないい笑 顔をしている。

レオポール・セダール・サンゴール橋の名前の主は、フランス人にも高く評価されたアフリカ社会の神様みたいな人だった。「ソルフェリ ノ」で親しまれていた歩道橋を、彼の生誕100年にちなんで、わざわざ改名したのだ。

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橋のたもとの左岸ソルフェリノ通りにはレジオンドヌールの勲位局サルム館、通称レジオンドヌール宮殿があり、その隣にオルセー美術館、少し 先は外務省、国民議会、ナポレオンの眠る廃兵院と、7区は、20あるパリの区の中で最も知的文化的政治的軍事的栄誉に満ちたトップ・エリートの集合場所 だ。

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右岸に渡ると、もとは王宮であったチュイルリー公園をまっすぐ行ってカスティリオーヌ通りに抜ける。カスティリオーヌ通りと言えば、ホテル・ロッ ティ、ホテル・コストの建ち並ぶセレブな通り。その先はパリの超高級宝飾店が集まり、リッツホテルのあるヴァンドーム広場だ。きらびやかで華やかな富の象 徴つまりはフランスの政治経済文化の粋をつなぐラインである。

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そ れまでずっと同じ名称で親しまれてきたのに、生誕100年記念とはいえ、その橋にもと植民地国大統領に名前を冠する。白人社会に着せられた不名誉なイメー ジを一掃しようと呼びかけた人物に。これにはやはりちょっと感動させられる。サンゴールは、政治家になる前に詩人としてフランス語を駆使して自国のアイディンティティーを語り続けた。その点が特にフランスの知識人の敬意を集めたのだろう。この国ではフランス語を用いて語る異国人を差別しない。それをあらため て知ったような気がしてなんだか嬉しい。(その3に続く)